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原料原産地表示制度で東京都、条例告示案策定へ JAS法との整合性課題 日本食糧新聞の 2008/05/12
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東京都の消費生活対策審議会は4月30日にまとめた答申で、調理冷凍加工食品の原料原産地表示の義務付けを求めた。答申を受けて都は議会の採択が不要な消費生活条例の告示案として5月中にもまとめる予定だ。加工食品の原料原産地表示のルールを定めた国の法律であるJAS法との整合性を狙うが、法律の根幹の部分が異なるため、告示によってもともと複雑な表示制度が消費者にも企業にも、さらにわかりにくくなる可能性も出てきた。(伊藤哲朗)
都は制度全体を検討中だが、答申の考えを最大限反映させる意向だ。5月中には条例の告示案としてまとめ、パブリックコメントの募集などを行って、8月ごろには公布・実施の見込みだが、経過措置も1年以内になりそうで、さらに短くなる可能性もあるという。罰則はないが、指導、勧告、社名公表などの行政処分で対応する考えだ。表示が困難場合は電話、ファックスでの対応も認められる。
新たな告示では、国内で製造されたギョウザ、麺など調理冷凍食品に適用され、うち原材料に占める重量割合が5%以上で上位3品目、「エビピラフ」のエビのように商品名に付けられた原材料のうち、JAS法で原産地を義務付けられた生鮮食品や加工食品の原産地表示を求める。小麦粉は、JAS法で義務付けられていないため対象外だ。冷凍チャーシュー麺のチャーシューを自家製造した場合は対象となるが、他の企業からチャーシューを調達した場合は表示しなくてもよい。これはJAS法で生鮮食品の原産地は表示義務があり、加工食品では20品目群と漬物など4品目だけが対象となり、20品目群のうち食肉関係では生鮮に味を付けたものと、ゆでたり蒸したものだけが対象となっているためだ。
◆異なる根幹部分 JAS法も今回の都条例の表示も「消費者の選択に資する」のが目的で、「消費者の要望がある」ことも新たな制度をつくる時の条件も同じだ。JAS法では原則として原材料の質が加工品の品質も左右する商品を原料原産地表示の対象にしていて、加工度があまり高くない20品目群などを選んだ。都条例では、中国で製造された食品に対する不安を背景に「消費者の要望」を重視した。
政府関係者は「表示制度はルールだけでなく監視体制も重要」と指摘する。都の権限は他の道府県の工場などに及ばず、立ち入り、指導などがしづらいため、監視体制を確立しづらい。国の法律に抵触する可能性がなければ「農水省は仲介しないだろう」という。
また大手冷凍食品メーカーがJAS法に沿って自主的に主要原材料の表示を実施しているため、都が目指す制度が、意味のないものになる可能性もある。